レクサスRXといえば、1998年の初代誕生以来、北米市場を中心に「高級クロスオーバーSUV」という新たなジャンルを切り拓いてきた、まさに国産プレミアムSUVのパイオニア的存在です。その流麗かつ力強いエクステリアデザイン、匠の技が光る上質なインテリア、そしてレクサスならではの「おもてなし」を感じさせる快適装備の数々は、世界中の多くのファンを魅了し続けています。
しかし、その一方で、購入を真剣に検討している方や、実際に納車されてオーナーになった方の一部から、走行安定性について少々厳しい意見が聞かれることも事実です。
「高速道路でのレーンチェンジで、思ったより車体がふらつく」「山道のカーブで、まるで船に乗っているかのように大きく傾く気がする」「直進しているはずなのに、常にハンドルを微修正しなければならない」といった声は、これから数百万円、あるいは一千万円近い金額を支払って購入を考える方にとっては、決して見過ごすことのできない重大な懸念点でしょう。
私はこれまで20年以上にわたり自動車ライターとして活動し、歴代のレクサスRXはもちろん、欧州プレミアムブランドのSUVから本格的なクロスカントリー車まで、世界中のあらゆるSUVを試乗してきました。
その経験から申し上げますと、この「RXは不安定だ」という評価の正体は、車の性能不足という単純な話ではなく、物理的な特性やメーカーの設計思想、そしてドライバーのこれまでの運転経験や感覚との「ズレ」に起因することが非常に多いと感じています。
今回は、なぜこれほど評価の高いレクサスRXにおいて走行安定性が悪いと言われてしまうのか、その真実を街乗り、高速道路、山道という3つのステージで徹底的に検証します。さらに、サスペンションやタイヤの工学的メカニズムにまで踏み込み、プロの視点で分析したリアルな評価と、明日から実践できる改善策を余すことなくお届けします。
【この記事で分かること】
- RXが「不安定」と感じる具体的シーンと物理的要因
- 街乗りのふらつきや高速での横風への挙動特性
- タイヤ選びや空気圧など、走りを改善するメンテナンス術
- 歴代モデルから最新GA-Kプラットフォームへの進化と変化
レクサスRXの走行安定性が悪いと言われる理由と感じやすい場面
レクサスRXはその堂々としたボディサイズ(全長4,890mm×全幅1,920mm×全高1,700mm前後 ※モデルによる)と、快適性を極限まで追求した「空飛ぶ絨毯」のような乗り心地が最大の特徴です。しかし、その「究極の快適性」が、時としてドライバーには「不安定」「頼りない」と解釈されてしまうジレンマがあります。
特に、これまで重心の低いセダン(クラウンやGS、ISなど)や、ステーションワゴン、あるいは足回りの硬いドイツ製のスポーツカーなどに乗っていた方が、初めてRXに乗り換えた場合、その挙動の違いに戸惑うケースが後を絶ちません。 車という乗り物は、重心の高さ、サスペンションのストローク量(動く幅)、そしてシートポジションによって、ドライバーの三半規管や背中に伝わる情報は劇的に異なります。
ここでは、具体的にどのような場面でドライバーが「おや?この車、大丈夫か?」と不安を感じるのか、そのシチュエーションをさらに深掘りして解説していきます。日常的な運転シーンの中に隠れている「不安定さ」の正体を知ることで、それが車の欠陥なのか、それとも受け入れるべき特性なのかが明確に見えてくるはずです。
レクサスRXで走行安定性が悪いと言われる背景とは?
レクサスRXに対して「走行安定性が悪い」という評価が生まれる背景には、昨今の爆発的なSUVブームによるユーザー層の劇的な変化と、レクサスというブランドが貫く高級車特有の車作りが複雑に絡み合っています。
かつてのSUV(RV)といえば、パジェロやランドクルーザーのように、ラダーフレーム構造を持つ「オフロードを走るための車」であり、乗り心地の悪さや揺れの大きさはある程度許容されていました。しかし、現在はRXのようなモノコック構造の「都市型SUV」が主流となり、セダンからの乗り換え需要を一手に引き受けています。
これまで重心の低いクラウンや輸入車セダンに乗り、路面に吸い付くような走りに慣れていたドライバーが、視線が高く、物理的な重心位置も高いRXに乗った瞬間、脳内の予測と実際の挙動にギャップが生じます。頭の位置が高い分、わずかな車体の傾きでも頭部は大きく振られることになり、これを「不安定」と脳が錯覚してしまうのです。
また、レクサスが追求する「徹底した静粛性と振動の遮断(NVH性能の向上)」も、逆説的に不安感を生む要因になり得ます。 通常、路面のざらつきやタイヤの接地感といった情報は、ステアリングやシート、フロアを通じてドライバーに伝わり、「今、車は路面をしっかり掴んでいる」という安心感につながります。
しかし、レクサスRXは快適性を重視するあまり、分厚い吸音材や制振材、液封エンジンマウントなどを駆使して、それらのノイズや微振動を徹底的に遮断しています。
その結果、まるで雲の上を走っているような浮遊感(フローティング感)が得られる一方で、直進している時は極上の快適さを提供しますが、少しでも車が挙動を乱したり、横風を受けたりした際には、接地感の希薄さが「車がどこへ飛んでいくか分からない」という不安に変わるのです。
| 比較項目 | スポーツセダン・クーペ | レクサスRX(ラグジュアリーSUV) | 感じ方の違い・メカニズム |
|---|---|---|---|
| 重心位置 | 地面から約500mm〜550mm | 地面から約650mm〜700mm | 支点が高い位置にあるため、振り子のように頭が大きく振られる感覚が強い |
| サスペンション | ショートストロークで引き締まっている | ロングストロークでしなやか | RXは荷重移動に時間がかかり、挙動の変化が大きくゆったりと出る |
| 路面情報(インフォメーション) | ステアリングにダイレクトに伝わる | ゴムブッシュ等でフィルターを通して伝わる | RXは路面の状況が把握しづらく、接地感が希薄に感じやすい(情報の遮断) |
| 視点の高さ(アイポイント) | 地上1,000mm〜1,100mm | 地上1,400mm〜1,500mm | RXは視覚的な揺れの半径が大きく、恐怖感を感じやすい |
| タイヤのたわみ | 扁平率が低く(35〜45)、たわみが少ない | 扁平率が高く(55〜60)、たわみが多い | RXはハンドル操作から車体が動くまでに「ゴムの変形」によるタイムラグがある |
この表からも分かるように、物理的な構造の違いが、そのまま感覚的な「安定・不安定」の評価に直結しています。つまり、RXの走行性能そのものが低いのではなく、ドライバーがこれまでの経験から期待する挙動と、実際の物理特性に大きなギャップが生じていることが、ネガティブな評価の背景にある大きな要因と言えるでしょう。
街乗りで「ふらつく」と感じるドライバーの共通点
街乗り、特に信号の多い市街地や住宅街、ショッピングモールの駐車場などを走行している際に「なんだかふらふらする」「同乗者が酔いやすい」と感じるドライバーには、運転操作におけるいくつかの共通点が見受けられます。
まず一つ目は、アクセルとブレーキの操作、いわゆる「ペダルワーク」が少しラフであるケースです。 RXのような重量級(約2トン)かつサスペンションがソフトでストロークの長い車は、アクセルを強く踏み込んだり、ブレーキを急に踏んだりすると、車体が前後に大きくお辞儀をするような動き(ピッチング)が発生します。
スポーツカーならすぐに収まるこの揺れが、RXではサスペンションが伸び縮みする時間が長いため、しばらく残ります。この前後の揺れが完全に収まらないうちにハンドルを切って曲がろうとすると、車体には「前後の揺れ」に「左右の揺れ(ロール)」が加わり、斜め方向への複雑な揺れ(ダイアゴナルロール)が発生します。これが「予測不能なふらつき」として知覚されるのです。
二つ目は、路面のうねりやマンホールの段差、工事跡などを通過する際の速度コントロールです。 レクサスRXのサスペンションは、角のある衝撃を丸めて柔らかくいなすように設計されていますが、低速域(時速20km〜40km程度)では、入力に対して車体がゆったりと揺れ戻す特性があります。
これを「ふんわりとした良い乗り心地」と感じるか、「いつまでも揺れている締まりのない足」と感じるかは個人差が大きい部分です。特に三半規管が敏感な方や、これまで硬めの足回りの車に乗っていた方は、この独特の揺り戻しを不快なふらつきと捉えがちです。
また、意外と見落としがちなのが、ドライビングポジションの甘さです。 SUVは視点が高く室内も広いため、リビングのソファに座るようにリラックスして、背もたれを寝かせ気味にしたり、ハンドルを遠くで持ったりする傾向があります。
しかし、体がシートのバックレストや座面にしっかりと固定されていないと、車体がわずかに揺れただけで、ドライバー自身の体が大きく揺れてしまいます。その体の揺れがハンドルを持つ手に伝わり、無意識にハンドルを動かしてしまい、さらに車が揺れる…という悪循環(マン・マシン・オシレーション)を招いているケースも少なくありません。
- 街乗りでふらつきを感じやすい具体的な状況 交差点での右左折時
減速(ノーズダイブ)から旋回(ロール)、そして加速(スクワット)への移行がスムーズでなく、車体がグラグラする。 - マンホールや継ぎ目の通過
片輪だけ段差に乗った際、車体が左右にゆらりと揺すられ、収束に時間がかかる。 - 渋滞中のゴーストップ
断続的な発進・停止の繰り返しで、常に車体が前後に揺れ続け、同乗者が車酔いを起こす。 - 同乗者への配慮過多
助手席や後席の人を気遣って、普段よりも慎重かつ低速で走ろうとするあまり、逆にメリハリのない運転になり、不安定さを招く。
これらのシーンでは、RX特有の柔らかく懐の深い足回りが、ドライバーの意図(操作)よりも少し遅れて車体を動かすため、その「操作と挙動のタイムラグ」が不安感の正体となっているのです。
高速道路で風に煽られやすいと感じる理由
高速道路での優雅なクルージングは、本来レクサスRXが最も得意とするステージのはずです。しかし、ここで「怖い」「ハンドルを握る手に汗をかく」と感じるユーザーも少なからず存在します。 その最大の要因は、やはり物理的な「横風」の影響です。 RXは全高が1,700mm前後あり、側面投影面積(車を真横から見た時の面積)が非常に大きいため、セダンやクーペに比べて風を受ける面積が圧倒的に広くなります。
風速10m/s以上の横風を受けた際、車体側面にかかる圧力は何百キログラム単位にもなり、物理的に車体はどうしても流されてしまいます。特にトンネルの出口や、防音壁が途切れた場所、海沿いの橋の上(アクアラインなど)、大型トラックの追い抜き・すれ違いざまなど、突発的な横風を受けると、その影響は顕著です。
ここで問題となるのが、RXのパワーステアリングのアシスト特性と、サスペンションのセッティングです。 レクサス車は一般的に、「誰でも楽に、少ない力で運転できること」を重視しており、ステアリング操作が非常に軽く設定されています。街乗りや車庫入れではこれが大きなメリットになりますが、高速域では路面からの反力(ステアリングインフォメーション)が希薄になりがちです。
横風で車が流された際、どれくらいハンドルを修正すれば良いかが直感的に掴みにくく、無意識に修正舵(ハンドルを細かく左右に動かすこと)を当てすぎてしまう傾向があります。その結果、車体が左右に蛇行するように揺れてしまう「修正舵による誘発的なふらつき」が発生しているケースも多いのです。
さらに、最新の空力特性の観点からも考える必要があります。 近年のRXは燃費向上のために空力性能を徹底的に追求し、床下をフラットにするカバーなどで覆っています。しかし、SUVの形状上、ボディの下側に入り込む空気の絶対量はセダンより多くなります。
高速走行時には、この床下の空気が車体を持ち上げようとする力(リフトフォース)が働き、タイヤの接地圧(地面を押さえつける力)が若干下がることがあります。 これがドライバーの手元に伝わる「接地感のなさ」「フワフワ感」につながり、風に煽られた時の不安定感をより一層助長させていると考えられます。
参照元:JAF(日本自動車連盟)「強風時の運転について」
※一般的な背の高い車の特性として、強風時の注意点や物理的なメカニズムが詳細に解説されています。
高速道路での安定性を求めるならば、後述するスポーツモードへの切り替えなどでステアリングの手応えを意図的に重くし、サスペンションを引き締めることが有効ですが、ノーマルモードのまま漫然と走っていると、この物理的なネガティブ要素を強く感じてしまうことになるでしょう。
カーブや山道でロールが大きく感じる原因
ワインディングロードや山道を走行する際、カーブの外側に車体が大きく傾く現象を「ロール」と呼びます。レクサスRXにおいて、このロールが大きく感じられるのは、構造的な宿命と言っても過言ではありません。 物理の法則として、重心位置が高ければ高いほど、遠心力によって車体を傾けようとするモーメント(回転力)は大きくなります。
RXの場合、重いV6エンジンやハイブリッドシステム、そして背の高いボディ上屋が高い位置にあるため、カーブを曲がる際に外側のサスペンションが大きく深く沈み込み、逆に内側が大きく浮き上がるような挙動を示します。
しかし、誤解してはいけないのは、単にロールすること自体が悪ではないということです。マツダのロードスターのようなスポーツカーでも、適度にロールさせることでタイヤの接地性を高め、ドライバーに限界を知らせる設計になっています。 問題なのは、RXの場合、そのロールの「スピード」と「収束の仕方」です。
快適性を最優先したRXのサスペンションは、初期の縮み側が柔らかく設定されていることが多く、ハンドルをスパッと切った瞬間に「グラッ」と急激に傾く傾向があります。この「予期せぬ急激な姿勢変化」が、ドライバーに「おっと、倒れそう」「外側に放り出されそう」という恐怖心を与えてしまうのです。
また、S字カーブの切り返し(右カーブから左カーブへの連続など)の場面では、最初の揺り戻しが完全に収束しきらないうちに次のロールが始まるため、車体が船のようにゆらゆらと揺れ続けることになります。これを「揺れの残存」と呼びます。
これを防ぐために、最近のモデル(特にF SPORT)ではスタビライザーの強化や、電子制御サスペンション(AVS)によるリアルタイムな減衰力調整が行われていますが、それでも2トン級の物体が高い位置で揺れるという物理的な質量の移動を完全に消すことはできません。
ロールを感じやすくさせるNGな運転操作
- ブレーキリリースのタイミング
カーブの入り口でブレーキを離すのが早すぎると、前輪にかかっていた荷重(グリップ力)が抜け、不安定な状態でターンインすることになり、急激なロールを招く。 - 舵角の修正
一定の舵角で曲がれず、カーブの途中でハンドルを切り足したり戻したりすると、その都度車体が揺れ、安定しない。 - アクセルワーク
アクセルのON/OFFが激しいと、車体の前後荷重移動が安定せず、ピッチングとロールが複合して挙動が乱れる。
プロの視点で見ると、RXで山道を安定して「速く」ではなく「快適に」走らせるには、スポーツカー以上に丁寧で滑らかな荷重移動が求められます。
ブレーキをじわりと残しながらカーブに入り、ゆっくりと時間をかけてロールを作っていくような「大人の運転」を心がければ、意外なほど粘り強いコーナリングを見せてくれるのもRXの実力なのですが、雑な操作に対しては挙動の乱れとして正直に反応してしまう、ある意味でドライバーの技量が試される車でもあります。
重心の高さが走行安定性に与える影響
ここではもう少し踏み込んで、重心の高さが走行安定性にどう影響しているのかを物理学的に解説します。 車の安定性を語る上で「重心高(Center of Gravity Height)」は最も重要なファクターの一つです。 重心とは、その物体の重さが釣り合う中心点のことですが、自動車工学において、この位置が地面に近いほど安定し(ロー・センター・オブ・グラビティ)、遠いほど不安定になります。
例えば、長さの違う二つの「振り子(メトロノーム)」を想像してください。 紐が短い振り子(低重心)は素早く動きますが、振れ幅は小さくすぐに止まります。一方、紐が長い振り子(高重心)はゆっくりと動き出しますが、一度動き出すと大きく動き、止まるのにも時間がかかります。
車に置き換えると、重心が高いRXは、ハンドルを切ってから車体が傾き終わるまでの時間(ロール固有振動数)が長く、その移動量(ロール角)も大きくなります。 この「時間差」と「移動量の大きさ」こそが、人間の感覚における「不安定」「怖さ」の正体です。
重心高による影響の比較と物理的挙動
| 影響が出る要素 | 低重心車(セダン・スポーツカー) | 高重心車(RX・SUV全般) | ドライバーへの影響と対策 |
|---|---|---|---|
| ロールモーメント | 小さい(傾きにくい) | 大きい(傾きやすい) | カーブでの傾きに恐怖を感じやすい。丁寧なステアリング操作が必要。 |
| 荷重移動の速度 | 速い(キビキビ動く) | 遅い(ゆったり動く) | 操作に対する車の反応がワンテンポ遅れる。早めの操作開始がカギ。 |
| ピッチング挙動 | 少ない(フラット) | 多い(前後に揺れる) | 加減速で頭が前後に振られやすい。「カックンブレーキ」になりやすい。 |
| 横風の影響 | 受けにくい | 支点が遠いため受けやすい | テコの原理で大きく煽られる。強風時は速度を10〜20%落とすのが鉄則。 |
| ロールセンター高 | 地面に近い | 地面から高い | サスペンションジオメトリによる補正が必要だが、限界は低い。 |
さらに、RXのようなSUVは、悪路走破性のために最低地上高(地面から車体底面までの距離、RXなら約200mm)を確保する必要があります。そのため、サスペンションのアーム取り付け位置やエンジンの搭載位置も必然的に高くなります。 これにより、タイヤが路面を捉える力点(接地点)と、車体が揺れる作用点(重心)の距離が離れてしまい、テコの原理で揺れが増幅されやすくなるのです。
この物理的なハンディキャップを補うために、メーカーはトレッド(左右のタイヤ間の距離)を広げて踏ん張りを効かせたり、タイヤを太くしてグリップ力を稼いだりしていますが、根本的な「重心の高さによる慣性モーメント」の影響をゼロにすることはできません。
RXに乗る以上、「自分は重心の高い重量物を動かしているんだ」という意識を常に持ち、物理法則に逆らわない運転をすることが、安定走行への第一歩と言えるでしょう。
タイヤ・空気圧がレクサスRXの安定性に直結する理由
タイヤは車において唯一路面と接している部品であり、その接地面積はタイヤ1本あたりハガキ1枚分、4本合わせてもわずかA4用紙1枚分程度しかありません。 このわずかな面積で2トン近いRXの巨体を支え、「走る・曲がる・止まる」という全ての運動エネルギーを伝えているわけですから、タイヤの状態や性能が走行安定性に直結するのは当然のことです。
レクサスRXにおいて特に注意したいのが、タイヤの「ハイト(厚み・偏平率)」と「サイドウォールの剛性」です。
RXの純正タイヤは、グレードにもよりますが、235/55R20や235/60R18といったサイズが採用されています。 ここで注目すべきは、扁平率(55や60という数字)です。これはタイヤの断面の高さを表しており、数字が大きいほどタイヤの側面(サイドウォール)が分厚くなります。
分厚いタイヤはエアボリュームが多く、クッション性が良いため乗り心地には非常に有利ですが、ゴムの部分が多いため、コーナリングなどの横方向の力に対して「たわみ」や「ヨレ」が発生しやすくなります。
ハンドルを切った時、まずタイヤのゴムが変形してよじれ、その後にホイールが引っ張られ、最後にサスペンションを介して車体が向きを変えるというプロセスを辿ります。このゴムの変形量が大きいほど、ドライバーは「ハンドルの反応が鈍い」「足元がぐにゃっとする」と感じ、これが不安定さ(応答遅れ)につながります。
また、空気圧の管理も極めて重要です。 指定空気圧よりも低い状態で走行すると、タイヤのたわみはさらに大きくなり、直進安定性が著しく低下します。燃費が悪化するだけでなく、最悪の場合はバースト(破裂)の危険性も高まります。
逆に高すぎると、タイヤの中央部分だけが接地して過敏な動きになり、路面の段差でポンポンと跳ねてしまい、接地感が薄れます。 特にRXのような重量車はタイヤへの負担が大きく、わずか10〜20kPaの空気圧の低下でも挙動に大きな変化が現れます。
参照元:一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)「タイヤの空気圧管理について」
さらに、新車装着タイヤ(OEMタイヤ)の種類によっても評価は分かれます。 新車時に装着されているタイヤは、燃費性能や静粛性を重視した「エコタイヤ寄り」の銘柄が選ばれていることが多く、転がり抵抗を減らすためにサイドウォールが柔らかめに作られていることがあります。これが走行時の「ふらつき感」を助長しているケースも見受けられます。
タイヤは単なる黒くて丸いゴムの塊に見えますが、その中身はベルト、カーカス、ビードなどで構成された高度な技術の結晶であり、RXの走りの質を決定づける最重要パーツなのです。
サスペンションの特性が与える安定性の違い
レクサスRXの乗り味を決定づけているのが、サスペンションのセッティング(味付け)です。 RXのサスペンションは、基本的に「北米市場での評価」を意識した「乗り心地重視」のチューニングがなされています。
アメリカの広大なフリーウェイを快適にクルージングするために、路面の細かい凹凸をしなやかに吸収し、乗員に不快な振動を伝えないことを最優先に設計されています。 そのため、バネレート(コイルスプリングの硬さ)は比較的柔らかく設定されており、ダンパー(ショックアブソーバー)の減衰力も、初期の動き出し(微低速域)をスムーズにする設定になっています。
この「しなやかさ」は、荒れた路面をゆっくり走る分には最高の快適性を提供しますが、日本の首都高のような継ぎ目の多いカーブや、山道で速度域が上がったり、急な回避操作を行ったりすると、車体の動きを抑えきれない場面が出てきます。
バネが縮んだ後、反発して伸びようとする力をダンパーが抑えきれず、車体がボヨンボヨンと揺れる…これが「フワつき」や「揺れ残り」として感じられる現象です。 特に、標準グレードやVersion Lといったラグジュアリー志向のグレードでは、この傾向が顕著です。
一方で、スポーツグレードである「F SPORT」には、専用チューニングが施されたサスペンションに加え、パフォーマンスダンパー(車体の微振動を吸収するダンパー)や、NAVI・AI-AVS(電子制御サスペンション)が標準装備されています。
AVS(Adaptive Variable Suspension system)は、Gセンサーや舵角センサーからの情報を基に、路面状況や運転操作に応じて、ショックアブソーバーの減衰力を瞬時に(100分の1秒単位などで)独立制御して切り替えるハイテクシステムです。 コーナリング時には外側のダンパーを一瞬にして硬くしてロールを抑え、直進時には柔らかくして乗り心地を確保するといった制御を自動で行います。
サスペンションによる特性の違いと選び方
標準サスペンション(ノーマル/Version Lなど)
- メリット:低速域での突き上げが少なく、ソフトで包み込まれるような極上の乗り心地。
- デメリット:高速域でのレーンチェンジや山道でのロールが大きく、収束が遅い。船酔いしやすい人は注意が必要。
F SPORT専用サスペンション + AVS
- メリット:ロールが適度に抑えられ、ハンドル操作に対する追従性が高い。スポーティで締まりのある走り。
- デメリット:路面の継ぎ目やマンホールなどで「コツコツ」とした入力(硬さ)を感じる場合がある。
このように、同じ「レクサスRX」という名前であっても、グレードや装備されているサスペンションシステムによって、走行安定性の印象はまるで別の車のように異なります。 「RXは不安定だ」という口コミを目にした時、そのドライバーがどのグレードに乗っているか、またどの世代のRXに乗っているかを確認することも、情報を正しく読み解くための重要なポイントになります。
レクサスRXで走行安定性が悪いと感じた時の改善策とチェックポイント

ここまで、レクサスRXが不安定に感じられる理由を物理的、構造的な側面から解説してきましたが、では実際にオーナーになった後、あるいはこれから購入して「もし不安定だったらどうしよう」と不安に思っている方はどうすれば良いのでしょうか。 実は、車の挙動は日々のメンテナンスやちょっとした設定変更、そしてパーツの選び方ひとつで劇的に改善することができます。
「高級車だから完成されているはず。何もいじらなくていい」と思われがちですが、自分好みの走りに近づけるためのチューニングや調整は、車を楽しむ上での醍醐味でもあります。 ここでは、プロライターとして自信を持っておすすめできる、走行安定性を高めるための具体的な改善策と、日常的にチェックすべきポイントを紹介します。
【この記事でわかること】
- タイヤ交換で劇的に変わる走行安定性と選び方
- 空気圧・アライメントのズレが招く不安定の仕組み
- サスペンションの劣化症状とリフレッシュ時期
- 走行モードや荷物の積み方で変わる安定性テクニック
走行安定性の悪さはタイヤ交換で劇的に変わるケース
もしあなたが現在のRXの走りに不満を持っているなら、最も効果的かつ即効性があり、車の性格をガラリと変えられるのが「タイヤ交換」です。 先ほども触れましたが、新車装着タイヤは燃費や静粛性、コスト、耐久性のバランスを高度にとった「優等生」ですが、必ずしも「走行安定性」や「ドライビングプレジャー」に特化しているわけではありません。
特に「高速道路でのふらつき」や「直進安定性」を改善したい場合、タイヤの銘柄選びを変えるだけで、まるで足回りのサスペンションをごっそり交換したかのような劇的な変化を感じることができます。
おすすめのタイヤ選びの基準と具体的カテゴリー
1. 剛性の高い「ハイパフォーマンスSUV専用設計」タイヤを選ぶ
近年、ポルシェ・カイエンやBMW X5などのハイパワーSUV向けに設計されたタイヤが登場しています。これらは2トンを超える車重と高重心を支えるために、ケース剛性(タイヤの骨格)が非常に強く作られています。
- おすすめ銘柄例
ブリヂストン「ALENZA 001」、ミシュラン「PILOT SPORT 4 SUV」など。 - 効果
ハンドルの応答性が向上し、レーンチェンジでの揺れ戻しがピタッと収まります。ドライ・ウェット性能も高く安心感があります。
2. 欧州メーカーのタイヤを検討する
ドイツのアウトバーンのような超高速域(時速200km以上)での走行を前提に開発されているコンチネンタルやピレリ、ミシュランなどの欧州ブランドは、サイドウォールが比較的しっかりしており、高速走行時のふらつきを抑える性能に優れています。
- 効果
高速道路でのビシッとした直進安定性が得られ、長距離運転での疲れが軽減します。
3. インチアップ・インチダウンの検討
- インチダウン(例:20インチ→18インチ)
路面の突き上げがマイルドになり乗り心地は向上しますが、ゴムの厚みが増すため、ふらつき感は増す可能性があります。 - インチアップ(例:18インチ→20インチ)
タイヤのゴムの厚み(偏平率)が減るため、たわみが減り、シャキッとしたダイレクトなハンドリングになります。ただし、路面の段差を拾いやすくなるため、乗り心地とのバランスが必要です。
参照元:ブリヂストンタイヤ 公式サイト「SUV専用タイヤの特性」
実際に私の知人のRXオーナーも、純正のコンフォート系タイヤからスポーツ志向の強いSUV専用タイヤ(ALENZA 001)に交換したところ、「高速道路でのレーンチェンジが怖くなくなった」「山道でハンドルを切った時の反応がリニアになり、運転が上手くなった気がする」と絶賛していました。
タイヤは4本で10万円〜20万円以上する高価な買い物ですが、車の性能の大部分を支配している唯一の接地面ですので、投資対効果(コスパ)は非常に高いと言えます。安易に格安タイヤを選ばず、目的に合ったタイヤを選ぶことが重要です。
空気圧・アライメントのズレが不安定走行を生む仕組み
どれだけ高性能なタイヤを履いていても、その取り付け状態や管理が不適切であれば、本来の性能は発揮されません。 特に見落とされがちですが、走行安定性に決定的な影響を与えるのが「ホイールアライメント」です。
アライメントとは、タイヤが車体に対してどのような角度で取り付けられているかを示す数値で、主に「トー(内股・蟹股)」「キャンバー(ハの字)」「キャスター(傾き)」という3つの要素があります。
新車の状態では適正値に調整されていますが、数万キロの走行や、段差の乗り越え、縁石にタイヤを軽くぶつけた程度の衝撃、あるいはサスペンション部品の経年劣化によって、この数値は微妙にズレていきます。
例えば、「トーイン(タイヤのつま先が適度に内側を向いている状態)」が適正値から外れて「トーアウト(外側を向いている)」になってしまうと、車は常に左右どちらかに行こうとする力が働き、直進していてもハンドルが取られやすく、常に修正舵が必要になり、強烈なふらつきの原因になります。
アライメント調整が必要なサイン
- ハンドルのセンターずれ
直進しているのにハンドルのロゴが斜めになっている。 - 偏摩耗
タイヤの内側や外側だけが極端に減っている。 - 直進性の悪化
高速道路で常にハンドルを左右に動かしていないと真っ直ぐ走らない。 - 復元力の低下
カーブを曲がった後、ハンドルが自然に中央に戻ろうとする力が弱い。
もしこれらの症状があるなら、一度タイヤ専門店やディーラーで「4輪トータルアライメント測定」を行うことを強くおすすめします。費用は2万円〜4万円程度かかりますが、ズレを適正値に修正することで「新車の頃のような吸い付く走り」が蘇ることも珍しくありません。
また、空気圧に関しては、ガソリンスタンドなどで月に一度のチェックが鉄則です。 空気はゴムを透過して自然に抜けていくため、何もしなくても1ヶ月で5〜10%程度低下することもあります。また、気温が下がる冬場は空気が収縮して圧が下がります。 レクサスRXの場合、運転席のドア開口部に適正空気圧が記載されたステッカーが貼られています(例:230kPaなど)。
高速道路を走る機会が多い方は、指定値よりも0.1〜0.2kgf/cm²(10〜20kPa)ほど高めに設定することで、タイヤの剛性感が増し、サイドウォールの変形を抑えてふらつきを低減させることができます。 ただし、入れすぎはタイヤの中央摩耗や乗り心地の悪化を招くので、プラス10%程度を目安にするのが良いでしょう。窒素ガスの充填も、温度変化による内圧変動が少ないためおすすめです。
サスペンションの劣化や個体差が影響するケース
中古でレクサスRXを購入された方や、新車から5年以上、あるいは走行距離が5万キロを超えている方は、サスペンション自体の「経年劣化」を疑う必要があります。
サスペンションを構成する「ショックアブソーバー(ダンパー)」の中には専用のオイルとガスが入っており、走行を重ねるごとに内部のバルブやシール部品が摩耗し、減衰力(揺れを止める力)が徐々に低下していきます。 これを俗に「ダンパーが抜ける」と表現します。
ダンパーが抜けてしまうと、スプリングの反発運動を制御できなくなり、一度段差を乗り越えただけで車体がいつまでもボヨンボヨンと揺れ続けることになります。これが極度の走行不安定さを招き、高速道路などでは非常に危険な状態になります。
また、サスペンションのアーム類やスタビライザーリンクには「ブッシュ」と呼ばれるゴム部品が多用されていますが、これも経年劣化で硬化したり、ひび割れたり、潰れたりします。 ブッシュが劣化すると、サスペンションが設計通りの正確な軌跡で動かなくなり、ハンドリングの曖昧さや、直進安定性の低下、ブレーキング時のジャダー(振動)を引き起こします。
サスペンションリフレッシュの目安とチェックポイント
- 走行距離5万キロ〜
ブッシュ類の目視点検(ひび割れチェック)、ダンパーのオイル漏れ点検。性能低下が徐々に始まる時期。 - 走行距離8万キロ〜
ダンパー交換を真剣に検討すべき時期。新車時と比較して乗り心地や収束性が明らかに悪化している可能性大。 - 走行距離10万キロ〜
ブッシュ、アッパーマウント、ダンパーを含む足回り全体のリフレッシュ推奨時期。ここを交換すると新車の走りが蘇ります。
レクサス車は耐久性が高く壊れにくいと言われますが、ゴムやオイルといった消耗品に関しては他の車と同じく物理的に劣化します。「最近、新車の頃より揺れが大きくなった気がする」「段差でゴトゴト音がする」と感じたら、それは慣れではなく、愛車からの「交換してほしい」というSOSサインかもしれません。
ディーラーでの定期点検(車検や12ヶ月点検)の際に、「足回りのブッシュやショックの状態を重点的に見てほしい」とリクエストしてみましょう。
走行モードの設定で安定性が大きく変わる理由
レクサスRXには、「ドライブモードセレクト」という便利な機能が搭載されています(グレードにより名称や機能は異なります)。 センターコンソールにあるダイヤルやスイッチで、「ECO」「NORMAL」「SPORT S」「SPORT S+」といったモードを瞬時に切り替えることができます。
実は、このモード切替を「燃費が悪くなりそうだから」と使わず、常にNORMALやECOで走っているオーナーが意外と多いのですが、走行安定性を高めるためには非常に有効なツールであり、使わない手はありません。
特に注目すべきは、F SPORTなどに搭載される「SPORT S+」モード(またはSPORTモード)です。 NAVI・AI-AVS装着車の場合、このモードを選択すると、以下の3つの変化が同時に起こり、車が「戦闘モード」へと変貌します。
- サスペンションの減衰力が高まる(足が硬くなる)
ダンパーの減衰力がハード設定になり、ロール(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)が物理的に抑制されます。これにより、車体のフラット感が増します。 - パワーステアリングのアシスト量が減る(ハンドルが重くなる)
ステアリングの手応えがズシリと重くなります。これにより、高速道路での路面インフォメーションが増え、微細な修正舵がやりやすくなり、直進時のふらつきが減ります。 - エンジンのレスポンスと変速制御が向上する
アクセル操作に対して即座に駆動力がかかるようになり、トラクション(駆動力)をかけながら安定してカーブを曲がれるようになります。また、高い回転数を維持するため、再加速もスムーズです。
走行シーン別・プロが教えるおすすめモード活用術
- 街乗り・渋滞・同乗者がいる時
NORMAL または ECO (ゆったりとした乗り心地で快適に移動。突き上げを抑える) - 高速道路・バイパス・風が強い日
SPORT S または SPORT S+ (直進安定性を高め、横風やレーンチェンジ時のふらつきを防止。ハンドルの座りを良くする) - 山道・ワインディング
SPORT S+ (ロールを抑え、意のままのハンドリングを楽しむ。下り坂でのエンジンブレーキ活用にも有効) - CUSTOMモード(ある場合)
パワートレーンはNORMAL(燃費重視)、シャシー(足回り)はSPORT(安定重視)といった自分好みの組み合わせ設定が可能。
「燃費が悪くなる」といっても、必要な場面で一時的に使う分には誤差の範囲です。むしろ、高速道路などで車体が不安定なまま、神経をすり減らして走り続けることは、ドライバーへの疲労蓄積につながり、安全運転を阻害します。
必要な場面では迷わずスポーツモードに入れ、車のキャラクターを「快適仕様」から「安定仕様」へと切り替えてみてください。スイッチ一つでここまで走りが変わるのかと驚かれるはずです。
荷物の積みすぎが走行安定性に悪影響を与えることも
広大なラゲッジスペースを持つSUVであるRXは積載能力が高いため、ついつい荷物を積みっぱなしにしてしまいがちです。 ゴルフバッグ、キャンプ道具、洗車用品、ベビーカー、あるいは万が一のための水や食料など、ラゲッジルームが満載になっていませんか? 実は、この「荷物の積みすぎ」や「積み方(重量配分)」が、走行安定性を悪化させる隠れた原因になっていることが多々あります。
車体の後部(リアオーバーハング部分)に重い荷物を積むと、テコの原理でリアサスペンションが沈み込みます。 すると、シーソーのようにフロントタイヤが持ち上がり、フロントの接地荷重が相対的に減少します。これを「リア下がり・フロント上がり」の状態と言います。
この状態で高速道路を走ると、操舵輪であるフロントタイヤが浮き気味になり、路面を掴む力が弱まるため、風の影響を受けやすくなったり、ハンドルの効きが悪くなったり、直進性が悪化したりします。
安定性を損なわないための正しい荷物の積み方
重いものは「奥へ」「低く」「中心へ」
重い荷物(水、金属類など)は、できるだけ後部座席の背もたれに密着させる位置(車体の中心に近い位置)かつ、床面に低い位置に置きます。これによりヨー慣性モーメントの増加を防ぎます。 左右のバランスを均等に 片側に重さが偏らないように配置します。
偏っていると、ブレーキング時やコーナリング時に挙動が乱れる原因になります。
不要な荷物は「断捨離」する
「いつか使うかも」と載せている重い荷物は、燃費悪化の原因になるだけでなく、運動性能を低下させます。週末のゴルフが終わったら、バッグは降ろしましょう。
また、ルーフボックスやルーフキャリアを使用している場合、最も高い位置に重量物が載ることになるため、重心位置が劇的に高くなります。
これにより、カーブでのロール量や横風の影響が通常よりも格段に大きくなります。ルーフに荷物を積んでいる時は、いつも以上に「重心の高い、頭の重い車を運転している」という意識を持ち、カーブ手前での十分な減速を心がける配慮が必要です。
モデル別(旧型・新型)で走行安定性の評価が違う理由
最後に、レクサスRXの世代による走行性能の違いについて触れておきましょう。 RXはモデルチェンジを重ねるごとに、プラットフォーム(車の骨格)や製造技術が進化しており、それに伴って走行安定性の評価も大きく変化しています。中古車を検討されている方は特に重要です。
3代目RX(2009年〜2015年:10系)
この世代までは、プラットフォームの基本設計がやや古く、ボディ剛性や溶接技術の面で最新モデルに比べると不利な点がありました。 特に初期モデルでは、リアの開口部が大きいSUV特有のボディの「よじれ」や「ブルブル感」を感じやすく、サスペンションだけで揺れを止めようとする傾向があったため、「乗り心地は良いが、スポーティな走りには不向き」「高速で頼りない」という評価もありました。F SPORTが設定されたのも後期からです。
4代目RX(2015年〜2022年:20系)
先代から大きく剛性を向上させ、「構造用接着剤」の使用範囲拡大や「レーザースクリューウェルディング(LSW)」の採用などでボディを強化。エンジンのダウンサイジングターボ化なども進み、走りの質感が向上しました。しかし、基本プラットフォームはKプラットフォームの改良版であり、重心の高さなど物理的なネガは残っていました。2019年のマイナーチェンジでさらにボディ剛性が強化され、足回りの熟成が進みました。
5代目RX(2022年〜:35系・現行含む最新世代)
最新のRXでは、トヨタの次世代プラットフォーム「GA-Kプラットフォーム」が採用されています。 これは「走る・曲がる・止まる」の基本性能をゼロから見直し、低重心化、高剛性化、軽量化を徹底的に追求した骨格です。リアサスペンションも新開発のマルチリンク式となり、路面追従性が飛躍的に向上しています。
さらに、DIRECT4(4輪駆動力制御システム)などの最新技術も投入され、姿勢制御が緻密に行われています。新型に乗って「不安定だ」と感じる人はかなり減っていますが、それでもセダンに比べれば重心は高いため、物理的な特性は残ります。
参照元:トヨタ自動車 グローバルニュースルーム「TNGAプラットフォームについて」
もしこれから中古でRXを購入しようと考えているなら、予算が許す限り高年式のモデル、あるいは4代目のマイナーチェンジ後(2019年8月以降)のモデルを選ぶことをおすすめします。「レクサスRX」という名前は同じでも、その中身(骨格と筋肉)は別物と言えるほど進化しており、それが走行安定性の安心感に直結しているからです。
レクサスRXの走行安定性を高めるため【まとめ】

レクサスRXの走行安定性について、ネガティブな意見が生まれる背景から、物理的なメカニズム、そして具体的な改善策まで詳細に解説してきました。 結論として、レクサスRXは決して「走りが悪い車」ではありません。
むしろ、あの巨体であれだけの極上の快適性と静粛性を実現しているのは、レクサスの技術力の高さの証明に他なりません。 しかし、物理的な重心の高さや、北米市場を意識した快適性重視のセッティングゆえに、日本の道路環境やドライバーの感覚においては「不安定だ」と感じてしまう場面があることも事実です。
大切なのは、その特性を正しく理解し、適切なメンテナンスやちょっとした工夫、そして車に合わせた乗り方を実践することです。そうすれば、RXは単なる移動手段を超えた、最高のパートナーになってくれるはずです。
最後に、レクサスRXとのカーライフをより安全で、より快適で、より楽しいものにするためのポイントをまとめます。
RXの走行安定性を確保する10のポイント
- タイヤの空気圧は月に一度必ずチェックし、高速走行時は指定値より+10〜20kPa高めに設定する。
- タイヤ交換時は、剛性の高い「SUV専用ハイパフォーマンスタイヤ」や欧州ブランドを積極的に検討する。
- ハンドルのズレや偏摩耗を感じたら、迷わず「4輪アライメント調整」を行い、足回りを整える。
- 高速道路や山道、風の強い日は「SPORTモード」を積極的に活用し、足回りとハンドルを引き締める。
- 発進・停止時は、同乗者の頭が揺れないような丁寧なペダル操作を心がけ、ピッチングを抑える。
- ドライビングポジションを見直し、深く腰掛け、体がシートにしっかり固定されるように調整する。
- ラゲッジルームの荷物は「重いものは奥へ、低く、中心に」積み、不要な荷物はこまめに降ろす。
- サスペンションのへたり(5万キロ〜)を感じたら、ブッシュ交換やダンパー交換のリフレッシュを検討する。
- ルーフキャリア使用時は、重心が極端に高くなっていることを意識し、カーブ手前で十分減速する。
- 常に「自分は重心の高い車に乗っている」という物理的特性を頭の片隅に置き、ゆとりある運転を心がける。
これらを意識するだけで、あなたのレクサスRXは見違えるほど頼りになる相棒へと進化するはずです。 ラグジュアリーな空間と、安心感のある走りを両立させ、ご家族や大切な人との最高のドライブを楽しんでください。


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