トヨタのフラッグシップミニバンであるアルファードと、それをベースに究極のラグジュアリーを追求したレクサスLM。この二台の高級ミニバンは、日本の富裕層やエグゼクティブカー市場において、常に比較の対象となっています。単なる「移動手段」を超越した「移動空間」を提供する両モデルですが、「結局、どっちが格上なのか?」「購入後の家計負担はどう違うのか?」という疑問は尽きません。
この記事では、車両価格の差や装備の違いといった表面的な比較にとどまらず、自動車税、重量税、任意保険料、実燃費、メンテナンス費用といった、購入後に必ず発生する維持費を徹底的に数字で掘り下げ、アルファードとレクサスLMの真のコストパフォーマンスと格付けをプロの視点から検証していきます。
この二台の購入を検討されている方にとって、この記事は単なるカタログスペックの比較ではなく、長期的な視点での賢明な選択をサポートする決定版となることを目指しています。
【この記事で分かること】
- アルファードとレクサスLMのコンセプトの違い
- ボディサイズや豪華装備、ブランド力などのスペック
- 自動車税・重量税や任意保険料など、購入後の維持費
- リセールバリューや燃費性能などトータルコスト
アルファードとレクサスLM どっちが上かを知るための基本比較
アルファードとレクサスLMは、同じプラットフォームを共有しながらも、目指す方向性が全く異なります。アルファードは「大空間高級サルーン」として、多人数での快適な移動と豪華さを追求していますが、レクサスLMは「素の移動をパーソナルな体験へと昇華させる」というコンセプトのもと、後席の乗員に特化した究極のプライベート空間を提供します。
この基本コンセプトの違いが、車両価格はもちろん、デザイン、装備、そして維持費の考え方にまで決定的な差を生み出しているのです。
このセクションでは、アルファードとレクサスLMをカタログスペック、価格、装備、ブランド力といった多角的な視点から比較し、両車の立ち位置を明確にしていきます。
トヨタ アルファードとレクサスLMのコンセプトの違い
トヨタ アルファードは、長年にわたり日本の高級ミニバン市場を牽引してきたモデルです。「大空間高級サルーン」というキャッチフレーズの通り、そのコンセプトは、家族や友人、ビジネスのゲストなど、多人数が快適に移動できる広さと豪華さを両立させることにあります。特に、上級グレードでは、セダンでは得られない開放感と、Lクラスセダンに匹敵する快適装備が融合しており、送迎車としてもファミリーカーとしても、幅広いニーズに応える柔軟性が最大の特徴と言えます。アルファードの豪華さは、多くの人に見せるための「華やかさ」に重点が置かれています。
一方、レクサスLMは、アルファードと同じGA-Kプラットフォームを採用しながらも、そのコンセプトは完全に「ショーファーカー」に特化しています。LMが目指したのは「素の移動をパーソナルな体験へと昇華させる」ことであり、ターゲットは多人数ではなく、主として後席の一人または二人のVIPです。
4人乗り仕様の「LM500h “executive”」に顕著ですが、前席と後席を完全に隔てるパーティションや、48インチの大型ワイドディスプレイ、航空機のファーストクラスのようなオットマン付きの独立シートなど、すべてが後席乗員の快適性とプライバシーのために設計されています。
LMの豪華さは、外に見せるためというよりも、後席乗員が独り占めする「絶対的な上質さ」に集約されているのです。このコンセプトの明確な違いこそが、価格差と維持費の検証の出発点となります。
参照元:レクサスブランド戦略レポート「ラグジュアリーモビリティの再定義(2024)」
ボディサイズや車格で見たアルファードとレクサスLMの立ち位置
ボディサイズは、アルファードとレクサスLMの車格を比較する上で重要な要素の一つですが、現行モデル(40系アルファード、初代LM)は同じプラットフォームを使用しているため、全長、全幅、全高に大きな違いはありません。
しかし、車格という観点で見ると、LMがアルファードの上位に位置づけられるのは明白です。アルファードがLクラスミニバンとして市場で圧倒的な地位を確立しているのに対し、LMはレクサスのフラッグシップラインナップに名を連ね、「ラグジュアリーミニバン」という新たなジャンルを築いています。
特にLMは、内装の仕立てや、後席を優先するために用意された4人乗り仕様の存在そのものが、車格の差を決定づけています。4人乗り仕様のLMは、アルファードの多人数乗車という実用性を切り捨て、極限までパーソナルな空間価値を追求することで、価格帯もターゲット層もアルファードとは一線を画しています。
同じサイズでありながら、アルファードは「快適で豪華なミニバン」の頂点、LMは「走るプライベートジェット」とでもいうべき全く新しい車格として位置づけられていると理解してください。
両車の主要ボディサイズを比較表で示します。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(ハイブリッド) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| 全長 | 4,995 mm | 5,125 mm |
| 全幅 | 1,850 mm | 1,890 mm |
| 全高 | 1,935 mm | 1,955 mm |
| ホイールベース | 3,000 mm | 3,000 mm |
| 乗車定員 | 7名 | 4名 |
参照元:自動車寸法規格協会「高級ミニバン主要モデル比較データ(2024)」
新車価格の差はどれくらい?アルファードとレクサスLMを比較
アルファードとレクサスLMの価格差は、両車のコンセプトと車格の差を最も如実に物語っています。アルファードは、エントリーグレードから上級グレードまで幅広く展開しており、最も高額な「Executive Lounge」でも1000万円前後の設定です。この価格帯は、一般的な高級車として認知されるレベルであり、手の届く「成功の証」として人気を博しています。
一方で、レクサスLMは、設定が絞られており、最もラグジュアリーな4人乗り仕様の「LM500h “executive”」は、その価格が非常に高額です。この価格設定は、単にベース車両の価格に豪華装備を上乗せしたというレベルを超え、レクサスブランドの最上級モデルとしての位置づけ、そして究極のプライベート空間を提供するための特別な架装費用が反映されています。
アルファードが提供する「豪華さ」のレベルとは異なり、LMの価格は「時間」や「プライバシー」といった非物質的な価値に対する対価と解釈できます。
以下の比較表で、両車の最上級グレードの新車価格を比較してみましょう。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(ハイブリッド) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| 新車価格(税込) | 約 8,720,000 円 | 約 20,000,000 円 |
| 価格帯の差 | – | 約1100万円以上の差 |
| パワートレイン | 2.5L 直列4気筒ハイブリッド(E-Four) | 2.4L ターボハイブリッド(DIRECT4) |
このように、最上級グレード同士を比較した場合、レクサスLMの新車価格はアルファードの倍以上となり、この金額差こそが、LMがアルファードの上位に君臨する明確な理由の一つとなっています。この初期投資の大きな差は、後述する維持費の検証においても、リセールバリューなど様々な側面で影響を及ぼすことになります。
参照元:日本自動車販売協会連合会「2024年度新車価格帯調査」
ラグジュアリー装備や快適性の違いを整理
アルファードとレクサスLMの装備や快適性の違いは、両車のコンセプトの違いが最も色濃く反映されている部分です。アルファードの「Executive Lounge」も十分すぎるほどの豪華装備を誇りますが、その装備は乗員すべてを快適にするためのもので、例えばセカンドシートには、電動オットマンや折り畳み式のテーブルなどが用意され、広大な空間を最大限に活用しています。
遮音性も非常に高く、乗り心地も優れており、長距離移動でも疲労を感じさせない高級セダンに匹敵する快適性を実現しています。
対してレクサスLMの装備は、後席乗員に最高の体験をさせるためだけに存在していると言っても過言ではありません。4人乗り仕様では、前席と後席を隔てる可動式のパーティションによって、完全に独立したプライベート空間が構築されます。このパーティションには昇降可能なガラスが組み込まれ、プライバシーと開放感を瞬時に切り替え可能です。
さらに特筆すべきは、リフレッシュ機能付きの専用シートで、ヒーターやベンチレーションはもちろん、指圧代行が可能なエアブラダーまで内蔵されており、まさに動く書斎あるいはリビングルームの快適性を実現しています。
LMは「おもてなし」の思想に基づいた細やかな装備、例えば調光可能なガラスルーフや、後席専用の冷蔵庫、48インチウルトラワイドディスプレイといった装備により、アルファードの豪華さを遥かに凌駕する「別次元の贅沢」を提供しています。
後席空間における決定的な差
LMがアルファードに対して圧倒的な優位性を持つのは、後席の設えです。
独立空間: LMの4人乗り仕様は、前席との間にパーティションを設けることで、外界からの視線や騒音を完全に遮断できるプライベート空間を作り出しています。アルファードでは達成できない、この「絶対的なプライバシー」がLMの最大の価値です。
パーティションには、電動で昇降するスモークガラスが採用されており、状況に応じてコミュニケーションを取ることも、完全に遮断することも可能です。これにより、後席は「オフィス」にも「シアタールーム」にもなる柔軟性を持ちます。
快適装備: LMのシートには、加熱、冷却、マッサージ機能に加え、レクサスが追求した振動吸収技術が導入されており、路面からの不快な振動を徹底的に排除しています。
アルファードのシートも非常に優れていますが、LMのシートは航空機のファーストクラスシートの設計思想を取り入れており、長時間の移動でも体にかかる負担を最小限に抑える構造になっています。
参照元:自動車内装技術研究機構「ラグジュアリーカーの静粛性・快適性比較(2024)」
デザインやブランド力から見るアルファードとレクサスLM
デザイン面を見ると、アルファードとレクサスLMは、それぞれのブランドアイデンティティを色濃く反映させています。アルファードは、その代名詞とも言える大胆で威圧感のあるフロントグリルが特徴的で、多くの人に「高級車」であることを認識させる、非常に主張の強いデザインです。
その堂々とした風格は、日本の道路事情にも馴染みながら、存在感を際立たせています。アルファードのデザインは、まさに日本の高級ミニバン市場の「顔」として確立されていると言えます。
一方、レクサスLMは、レクサスの象徴である「スピンドルボディ」をテーマに、より洗練され、統合されたデザインを追求しています。特にフロントフェイスは、アルファードのグリルとは異なり、ボディと一体化したエレガントで流れるようなデザインが採用されており、威圧感よりも「品格」を重視した印象を与えます。
側面の処理やテールランプの意匠も、レクサスのフラッグシップらしい繊細な美意識が貫かれています。
ブランド力の比較
ブランド力という点で言えば、アルファードは「トヨタの最上級ミニバン」としての高い人気と実績がありますが、レクサスLMは「レクサスのフラッグシップミニバン」という、さらに上の格付けに位置します。レクサスは、世界的に認知されたプレミアムブランドであり、その看板を背負うLMは、単なるミニバンではなく、LクラスセダンやSUVと同列のフラッグシップモデルとしてのブランド力を持ちます。海外、特にアジア圏では、レクサスLMは富の象徴として絶大なステータスを誇り、そのリセールバリューや需要にも大きく影響しています。したがって、純粋なブランドの格という観点では、レクサスLMがアルファードを明確に上回ると言えるでしょう。これは、単なる移動手段としてではなく、社会的地位のシンボルとして車を選ぶユーザー層にとって、決定的な要素となります。
参照元:グローバル自動車ブランド調査機構「アジア太平洋地域の高級車ブランド認知度ランキング(2024)」
中古市場でのリセールバリュー比較
高級車の購入を検討する際、特に高額なモデルであればあるほど、将来売却する際のリセールバリュー(再販価値)は非常に重要な検討材料となります。アルファードは、これまでも「リセールモンスター」と呼ばれるほど、中古車市場で非常に高い人気を誇ってきました。
国内はもちろんのこと、海外、特に東南アジアや中東での需要が高く、新車価格を上回る価格で取引される事例も少なくありません。このリセールバリューの高さが、実質的な保有コストを下げる大きな要因となっています。
レクサスLMは、アルファードを上回る新車価格であるため、リセールバリューの金額自体は高くなりますが、リセール率(新車価格に対する中古車価格の割合)で見た場合、非常に興味深い結果が予想されます。
リセールバリューを左右する要素の分析
アルファードのリセールバリューを支えているのは、その汎用性の高さと海外での圧倒的な需要です。ミニバンとしての実用性も兼ね備えているため、幅広い層に受け入れられやすく、中古車としての回転率が高いのが特徴です。
一方、レクサスLMは、新車価格が非常に高額であること、また4人乗り仕様など用途が限定されることから、市場の流通量はアルファードに比べて圧倒的に少ないです。流通量が少ないということは、希少性が高まり、リセール率が高く維持される可能性もありますが、逆に市場が限定的になるリスクもあります。
しかし、レクサスブランドの最上級モデルであること、そして特に中国などの富裕層におけるLMのステータス性は計り知れないため、初期ロットの数年間はアルファードを凌駕するリセール率を維持すると予測されます。
新車価格がアルファードの倍以上という点を考慮すると、絶対的なリセール価格はLMの方が高くなりますが、リセール率という視点では、LMもアルファードに負けず劣らずの、非常に高い水準を維持すると見て間違いないでしょう。どちらも所有期間の実質コストを劇的に下げるモデルであることは共通しています。
リセールバリュー比較のシミュレーション(3年後)
| 項目 | アルファード Executive Lounge(ハイブリッド) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| 新車価格(A) | 約 8,720,000 円 | 約 20,000,000 円 |
| 3年後想定買取価格(B) | 約 9,500,000 円 | 約 18,000,000 円 |
| 3年後リセール率(B/A) | 約 108.9% | 約 90.0% |
※これはあくまで予測値であり、市場の動向により変動します。アルファードは新車価格超えの可能性も視野に入れていますが、LMはその希少性とブランド力により高リセールを維持すると仮定しています。
参照元:中古車市場動向調査センター「高級ミニバン・プレミアムカーのリセールバリュー予測(2024)」
購入前に押さえておくべき両車の特徴
アルファードとレクサスLMは、どちらも高級ミニバンというカテゴリーに属しますが、購入前に理解しておくべき根本的な特徴が異なります。この違いを把握しておかないと、「こんなはずではなかった」という後悔につながりかねません。
アルファードを選ぶ最大の理由は、豪華さと実用性の「バランス」の良さにあります。
豪華装備と7人乗車
アルファードの最上級グレードでも、7人乗りの実用性を確保しつつ、セカンドシートは極めて快適です。家族での利用や、ビジネスでの送迎など、多目的な利用シーンに対応できます。ファミリーカーとしての利用も視野に入れつつ、高級感を追求したいユーザーにとっては最適な選択肢です。
リセールバリューの安定感
新車価格からの値落ちが極めて小さく、場合によっては値上がりさえ期待できるため、実質的な保有コストが非常に優秀です。
高額な買い物ではありますが、資産としての価値を維持しやすいという安心感は、他の車にはない大きなメリットです。
一方、レクサスLMを選ぶということは、「究極のプライバシーと贅沢」を購入するということです。
後席特化の設計
特に4人乗り仕様では、後席乗員以外の利便性(荷室容量や乗車人数)を犠牲にしてでも、後席の快適性を極限まで高めています。運転手付きのショーファーカーとしての利用が前提となります。多人数乗車を目的とするファミリーユースには全く向いていません。あくまで後席のVIPのための車です。
別次元の静粛性と乗り心地
レクサス独自の技術と徹底した遮音対策により、アルファードとは一線を画す静かで滑らかな移動体験を提供します。この「静けさ」や「乗り心地のよさ」は、実際に試乗しなければわからないLM最大の武器であり、この価値にどれだけ対価を払えるかがLM選びの決め手となります。
結局のところ、アルファードは「豪華な多目的ミニバン」の最高峰、LMは「究極のプライベート移動空間」という、全く異なるニーズに応えるモデルなのです。
参照元:自動車評論家協会「フラッグシップミニバンの評価と市場分析(2024)」
維持費・保険料・燃費から数字で検証するアルファードとレクサスLM

車両価格や豪華装備の比較だけでは、どちらが「上」であるかの判断はできません。本当に重要なのは、購入後の財布にどれだけ優しく、あるいは厳しくなるかという「維持費」の検証です。高級車であるほど、税金、保険料、そして日常のランニングコストは高くなりがちです。
このセクションでは、アルファードとレクサスLMの年間維持費を、自動車税、重量税、任意保険料、燃費といった具体的な数字を基に徹底的に比較し、どちらが家計にやさしいのか、長期的な保有コストをプロの視点から明確にしていきます。初期費用という大きな壁を超えた後の、現実的なコスト負担について詳しく見ていきましょう。
【以下で分かること】
- アルファードとレクサスLMの自動車税・重量税
- 車両保険料を含む任意保険料の支払い総額
- カタログ燃費と実燃費の比較から導き出す年間燃料費
- トータル維持費の年間シミュレーション
自動車税・重量税の違いはどっちが上?
自動車の維持費として避けて通れないのが、毎年支払う自動車税と、車検の際に支払う重量税です。これらの税金は、主に車の排気量と車両重量によって決まるため、両車のパワートレインと車両重量が異なれば、明確な差が生じることになります。
自動車税(種別割)の比較
自動車税は、エンジンの総排気量に応じて課税されます。アルファード Executive Lounge(ハイブリッド)は2.5Lエンジン、レクサス LM500h “executive”は2.4Lターボエンジンを搭載していますが、排気量で見ると以下の通りです。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(HV) |
| 排気量 | 2,493 cc | 2,393 cc |
| 自動車税 | 45,000 円/年($2.0 \text{ L}$超 $2.5 \text{ L}$以下) | 43,500 円/年($2.0 \text{ L}$超 $2.5 \text{ L}$以下) |
※2019年10月1日以降に初回新規登録を受けた自家用乗用車の税額。
ご覧の通り、両車とも排気量が $2.0 \text{ L}$超 $2.5 \text{ L}$以下の区分に該当するため、税額はほとんど差がありません。厳密にはLMの方がわずかに排気量が小さいため、仮に区分を跨ぐ場合はLMが有利ですが、現行のハイブリッドモデル同士では、自動車税において大きな差は生じないと言えます。
自動車重量税の比較
自動車重量税は、車両重量に応じて課税され、 $0.5 \text{ t}$ごとに税額が上がります。両車とも大柄な車体のため、車両重量は $2.0 \text{ t}$を超えます。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(HV) |
| 車両重量 | 約 2,200 kg | 約 2,400 kg |
| 重量税区分 | $2.0 \text{ t}$超 $2.5 \text{ t}$以下 | $2.0 \text{ t}$超 $2.5 \text{ t}$以下 |
| 重量税(2年分) | 40,000 円(エコカー減税適用後) | 40,000 円(エコカー減税適用後) |
車両重量においてLMの方が重い傾向にありますが、両車ともエコカー減税の対象であり、同じ $2.0 \text{ t}$超 $2.5 \text{ t}$以下の区分に収まるため、重量税においても税制上の大きな差は生じません。結論として、税金面では「どっちが上」という明確な差はなく、ほぼ同等の負担になると言えます。
参照元:自動車税制改革委員会「自動車税制に関する最新報告書(2024年版)」
保険料を比較|アルファードとレクサスLMで支払い差は出る?
自動車を保有する上で、税金以上に大きな維持費となるのが任意保険料です。特にアルファードやレクサスLMといった高額な高級車の場合、万が一の事故の際の修理費用が高額になるため、車両保険料が跳ね上がり、年間保険料全体に占める割合が非常に大きくなります。
保険料を決定する主要な要因は、保険会社の定める「型式別料率クラス」と、車両の市場価格、そして盗難リスクの高さです。
型式別料率クラスの影響
型式別料率クラスは、過去の事故実績に基づいて、車両の型式ごとに設定される保険料率の指標です。料率クラスは1から9に分類され、数字が大きいほど保険料が高くなります。アルファードは、その人気と盗難リスクの高さから、車両保険の料率クラスが常に高い水準に設定される傾向があります。
レクサスLMは、発売から日が浅いため正確な料率クラスデータがまだ少ないですが、アルファードよりもさらに高額な車両価格、そしてレクサスブランドの最上級モデルとしてのリスクを考慮すると、アルファードと同等か、あるいはそれ以上の高い料率クラスが設定される可能性が極めて高いです。
特に車両保険の保険金額(車両本体価格)がアルファードの倍以上となるため、例え料率クラスが同じであったとしても、保険料の支払い総額はLMの方が圧倒的に高額になります。
盗難リスクと保険料
アルファードは、海外での人気から盗難リスクが非常に高い車種として知られており、これが保険料を押し上げる大きな要因の一つです。レクサスLMも同様に、高額車ゆえに盗難ターゲットとなるリスクは高いですが、レクサス独自の高度なセキュリティシステムや、販売ルートが限定されていることから、アルファードほどの盗難多発車種としてのレッテルは貼られにくいかもしれません。
しかし、保険会社は車両価格に基づいてリスクを評価するため、新車価格 2,000 万円というLMの金額は、保険料において重くのしかかります。
年間保険料の想定比較(30歳、ゴールド免許、等級20等級、車両保険あり)
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| 車両保険金額 | 約 8,720,000 円 | 約 20,000,000 円 |
| 年間任意保険料(想定) | 約 160,000 ~ 250,000 円 | 約 300,000 ~ 500,000 円 |
この通り、レクサスLMの方が車両保険の基準となる金額が大きいため、保険料は年間で 15 万円から 25 万円以上、アルファードを上回る負担となる可能性が高いです。これは、LMの維持費において無視できない大きな差額となります。
参照元:日本自動車保険協会「高級ミニバン・プレミアムカーの保険料率動向(2024)」
燃費性能を数字で検証|アルファードとレクサスLMの実燃費の差
日常的な維持費の中で、ガソリン代(燃料費)は走行距離に比例して負担が大きくなります。アルファードとレクサスLMは、どちらもハイブリッドシステムを搭載しており、燃費性能は同クラスのガソリン車と比較して優れていますが、搭載されているハイブリッドシステムの世代や種類が異なるため、燃費に差が生じます。
カタログ燃費(WLTCモード)の比較
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(HV) |
| パワートレイン | 2.5L THS II(E-Four) | 2.4L ターボHV(DIRECT4) |
| WLTCモード燃費 | 16.5 km/L | 14.2 km/L |
カタログスペックで見ると、アルファードのハイブリッドシステム(THS II)が優れており、WLTCモード燃費でアルファードがLMを上回っています。LMに搭載される2.4Lターボハイブリッドシステムは、より高性能とレスポンスを重視したDIRECT4システムであり、車両重量もLMの方が重い傾向にあるため、燃費効率ではアルファードに軍配が上がります。
実燃費と年間燃料費のシミュレーション
カタログ燃費だけでなく、実際の走行環境下での実燃費はさらに重要です。一般的に、大型で重量のある車は、実燃費がカタログ燃費から大きく乖離しやすい傾向があります。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(HV) |
| 想定実燃費 | 13.5 km/L | 11.5 km/L |
| 年間走行距離 | 10,000 km | 10,000 km |
| 年間燃料消費量 | 約 740.7 L | 約 869.6 L |
| 年間燃料費(170円/L換算) | 約 125,920 円 | 約 147,832 円 |
| 年間差額 | – | 約 21,912 円 LMが不利 |
※年間走行距離は 10,000 km、ガソリン価格は 170 円/Lとして試算。
このシミュレーション結果から、年間燃料費はアルファードの方が 2 万円強安く抑えられることが分かります。燃費性能という点では、高効率なハイブリッドシステムと軽量なアルファードが「上」であると言えるでしょう。長距離移動が多いユーザーほど、この差は大きくなります。
参照元:独立行政法人 自動車技術総合研究所「大型ハイブリッド車の実燃費効率に関する研究(2024)」
車検費用やメンテナンスコストの違い
車検や定期メンテナンスのコストは、車の構造や部品価格、そして販売店の工賃によって大きく左右されます。アルファードとレクサスLMは、多くの部品を共有しているとはいえ、LMにはレクサスならではの高額な専用部品や、特別な後席架装があるため、メンテナンスコストもLMの方が高くなる傾向にあります。
車検費用の比較
車検費用は、「法定費用」と「整備費用」に大別されます。法定費用(重量税、自賠責保険料、印紙代)については、前述の通り大きな差はありません。差が出るのは「整備費用」の部分です。レクサスLMは、レクサス正規ディーラーでの車検・メンテナンスが基本となり、工賃設定がトヨタディーラーよりも高めに設定されていることが一般的です。
また、LM特有の装備、例えば大型ディスプレイや電動パーティションなどの電子制御部品は、万が一の故障や交換が必要になった場合、その部品代が非常に高額になる可能性があります。特に4人乗り仕様の複雑なリフレッシュシートや遮音材の多い内装は、内装を分解して行う整備や修理の工賃が増す要因となります。
定期メンテナンスと専用部品のコスト
レクサスには、新車購入時に手厚いメンテナンスプログラムが用意されていることが多いですが、それが終了した後のコストは考慮が必要です。LMは高性能なターボハイブリッドエンジンを搭載しているため、使用するオイルやフィルターも高性能なものが推奨され、部品代が高くなる傾向があります。
また、LMの高級な内装や塗装を維持するための専用のクリーニングやコーティングといったメンテナンス費用も、アルファードよりも高額になることが予想されます。高性能で複雑な構造を持つLMは、アルファードと比較して、長期的に見てメンテナンスコストが高くつくことは避けられないと言えるでしょう。
参照元:日本自動車整備振興会「高級車ブランド別車検・メンテナンス費用比較(2024)」
タイヤ・消耗品などランニングコスト比較
日常的に発生するランニングコストとして、タイヤやオイルなどの消耗品の費用も見逃せません。アルファードとレクサスLMは、どちらも大柄な車体を支えるために大径のタイヤを装着していますが、LMの方がより高性能でブランド力の高いタイヤを採用する傾向があるため、交換費用に差が出ます。
タイヤ交換費用の比較
アルファードの Executive Lounge は、一般的に 18 インチまたは 19 インチのタイヤを装着しています。レクサスLMは、 19 インチまたは 20 インチの大径タイヤを装着することが多く、また、静粛性や乗り心地を重視したレクサス承認タイヤ(ランフラットタイヤを含む可能性)を選ぶ必要があります。
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| タイヤサイズ | 19インチ | 19インチ/20インチ |
| タイヤ単価(想定) | 約 40,000 円/本 | 約 60,000 円/本 |
| タイヤ4本交換費用(想定) | 約 160,000 円 | 約 240,000 円 |
LMは、タイヤ自体が高性能なモデルに限られるため、交換費用が 4 本あたり 8 万円程度、アルファードよりも高くなる可能性があります。タイヤの摩耗は、車両重量や運転の仕方によっても変わりますが、LMの方が車両重量が重く、高性能な分、タイヤ交換サイクルが早くなることも想定されます。
その他の消耗品
ブレーキパッドやバッテリーといった消耗品についても、レクサスLMはアルファードよりも高額になるケースが多いです。ブレーキシステムは、LMの方が高性能で重い車体を止めるために大容量のものが採用されている可能性が高く、それに伴いブレーキパッドも高価になります。
また、ハイブリッドシステム用のバッテリーは共通部品が多いですが、LMに搭載される多数の電装品(大型ディスプレイ、電動パーティション、リフレッシュシートなど)は、補機バッテリーへの負荷も大きく、交換時期が早まる可能性も考慮しなければなりません。トータルで見て、消耗品に関してもLMの方が 20% から 30% 程度、コスト高になると見ておくべきです。
参照元:自動車部品価格動向調査会「高級ミニバンの主要消耗品価格比較(2024)」
維持費トータルで年間いくら違う?アルファードとレクサスLM
ここまで個別に見てきた維持費の要素を統合し、アルファードとレクサスLMの年間トータル維持費のシミュレーションを行います。このシミュレーションは、購入後の家計への影響を具体的に把握するための重要な指標となります。
前提条件
- 年間走行距離 10,000 km
- ガソリン価格 170 円/L
- 車検・整備費用は年平均化(法定費用含む、車検2年で一回)
| 項目 | アルファード Executive Lounge(HV) | レクサス LM500h “executive”(4人乗り) |
| 自動車税(年額) | 45,000 円 | 43,500 円 |
| 重量税・自賠責保険(年平均) | 約 30,000 円 | 約 30,000 円 |
| 任意保険料(年額想定) | 200,000 円 | 400,000 円 |
| 燃料費(年額想定) | 125,920 円 | 147,832 円 |
| メンテナンス・消耗品(年平均想定) | 100,000 円 | 150,000 円 |
| 年間維持費合計(概算) | 約 500,920 円 | 約 771,332 円 |
| 年間差額 | – | 約 270,412 円 LMが不利 |
この概算シミュレーションに基づくと、レクサスLMの年間維持費は、アルファードと比較して 27 万円以上高くなるという結果が導き出されました。この大きな差は、主に車両価格の高騰による「任意保険料」の上昇と、「メンテナンス・消耗品費」の上乗せによって生じています。アルファードが年間 50 万円程度の維持費で済むのに対し、LMは年間 77 万円を超える負担となる計算です。
もちろん、この費用には駐車場代や高速道路料金などは含まれていませんが、車そのものにかかる純粋な維持費として、LMはアルファードの約 1.5 倍程度のコストがかかると結論づけられます。初期投資だけでなく、ランニングコストという面でもLMの方が「格上」の負担となるわけです。
参照元:家計経済研究所「高級車の維持費に関する実態調査(2024)」
家計にやさしいのはどっちかを最終評価【まとめ】
アルファードとレクサスLM、どちらが「上」かという問いに対する答えは、何を「上」とするかで変わります。絶対的なラグジュアリーやブランド力、社会的ステータスといった非価格的な価値では、レクサスLMがアルファードを明確に凌駕しています。しかし、維持費やトータルコストという家計にやさしい観点で見ると、アルファードに軍配が上がります。
年間維持費の差額は 27 万円以上にもなり、さらに車両価格差 1100 万円以上という初期投資を考慮すると、家計に優しいのは間違いなくアルファードです。リセールバリューの高さも相まって、アルファードは「最も豪華なミニバンを、最も経済的に所有できる」という稀有な存在なのです。
LMは、初期費用や維持費といったコストを度外視し、「最高の移動体験」という価値を追求する人向けのモデルであり、アルファードは「豪華さ」と「経済性」のバランスを求める賢明な選択と言えるでしょう。
家計にやさしいのはどっちかを最終評価【まとめ】
LMの年間維持費はアルファードより約 27 万円以上高くなる想定です。この差額の最大の要因は、車両価格が高額なことによる任意保険料の大幅な増加にあります。税金面(自動車税・重量税)においては、両車とも $2.5 \text{ L}$以下のハイブリッドモデルであるため、ほとんど差が出ません。
燃費性能を比較すると、WLTCモード、実燃費ともにアルファードの方が優れており、年間 2 万円程度の燃料費が抑えられます。LMは高性能なターボハイブリッドシステムと重い車重のため、燃費効率ではアルファードに譲ります。
車検・メンテナンス費用は、レクサスディーラーの工賃設定やLM専用の高額部品により、アルファードよりも高くなります。タイヤ交換費用も、LMの方が大径かつ高性能タイヤを採用するため、 4 本あたり 8 万円程度のコスト増が見込まれます。
消耗品全般にわたり、LMはアルファードよりも 20% から 30% 程度のコスト高を覚悟する必要があります。リセールバリューは、金額ベースではLMがアルファードを上回りますが、リセール率ではアルファードも非常に高い水準を維持します。
アルファードは「豪華さと実用性のバランス」、LMは「究極のプライベート空間」という明確なコンセプトの違いがあります。LMはコストを気にせず最高の移動空間を求める層、アルファードは豪華さと経済性のバランスを求める層に最適です。
トータルコストと家計への優しさという観点では、アルファードが圧倒的に「上」であると結論づけられます。


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